脚色・演出 西本勝毅さん、制作 竹野明日香さん、舞台監督・出演者 亀井佑子さん、出演者 長瀬円美さんにインタビュー

人形劇団プーク もうぬげない・オルゴール劇場 2025

服がぬげなくなった「ぼく」の愛らしさがたまらない「もうぬげない」

世代を超えて愛される絵本「もうぬげない」が人形劇になり、3次元の世界に飛び出します。初演となるこの作品と人形劇の魅力について、人形劇団プークのみなさんにお聞きしました。

左から 竹野明日香(制作)、長瀬円美、亀井佑子、西本勝毅(脚本・演出)

何も考えず頭を空っぽにした状態で観て、ただただ楽しんでもらえる人形劇

──「もうぬげない」のあらすじを教えてください。

竹野:絵本作家のヨシタケシンスケさんの絵本が原作です。ある日、「ぼく」はお風呂に入るため服を脱ごうとしたところ、服が首元に引っかかって脱げなくなってしまいます。「どうしよう、このまま大人になっちゃうのかな。服が脱げないままなら、工夫しながら生きる? 同じように脱げない仲間を見つける?」など、「ぼく」の空想はどんどん広がっていき……というお話です。「ぼく」の考えるあれこれがとても楽しくて、子どもはもちろん、大人も心があたたかくなるお話です。

──なぜこの原作を人形劇にしようと思われたのでしょう。

竹野:世界情勢が不安定だったり、国内でも物価高騰が続いていたりと、不安や不満な要素は周囲にあれこれありますよね。お子さんがいらっしゃる方はお子さん自身のことだけでなく、その子がこの先生きる世界のことも心配になります。そういうことを考えすぎるとクタクタになってしまいますから、難しいことを考えず、頭を空っぽに長唄佐門会唄方 杵屋佐喜さん、三味線方 稀音家六四郎さん 詳しくは、公式WEBサイトへ https://tomin-fes.com/ 「2025都民芸術フェスティバル」では、2025年1月14日から3月30日まで、オーケストラ、室内楽、オペラ、現代演劇、バレエ、現代舞踊、邦楽、日本舞踊、能楽、民俗芸能、寄席芸能の全11分野にわたる様々な演目の公演を、都内各所の会場で実施します。して見て楽しめるものを作りたいと思いました。大人には「予備知識ゼロだったけど、面白かった。さぁ、明日からまた頑張ろう!」と楽しい気持ちを持ち帰ってもらえるような、そして子どもにはただただ笑ってもらい、あわよくば大きくなった時に「そういえばあの時は何も考えてなかったけど、確かに世の中ってあれくらい適当でもいいのかもしれないな…」と思い出してもらえるような作品がいいと。そう考えると、「もうぬげない」はその思いにふさわしいお話しだなと。それを脚色・演出の西本に話し、賛同してもらい企画しました。

──「オルゴール劇場 2025」についてご紹介をお願いします。

竹野:「オルゴール劇場」は、1作品5分前後のボードヴィル作品集です。数ある中から上演の度に作品を組み変えて、プーク人形劇場で上演を続けていました。ボードヴィル作品の上演は時折やっていましたが、「オルゴール劇場」としての上演は16年ぶりです。2025年版としてお披露目できることを、とてもうれしく思っています。手回しオルガン(オルゴール)の響きもお楽しみください。

絵本という2次元の世界が人形劇によって3次元の世界へ

──人形劇「もうぬげない」の見どころをおしえてください。

西本:まず、年齢に関係なく、「ばんざい」をしたままという不思議なポーズの「ぼく」を見ると、いろいろ想像していただけるという点です。次に、服が脱げなくなったことに対して「ぼく」が至った結論が「脱げなくてもいいんだ」なこと。世の中には「こうしなければいけない」「こうであるべき」といった一般論的なものが色々ありますが、「ぼく」を通じて「こうしなくてもいいんだ」といい選択肢があることに気づかせてもらえます。また、若い美術家ふたりが手がける魅力的な人形と舞台装置は、「ぼく」の子どもらしい豊かな空想の世界へといざなってくれます。

人形劇の魅力はやはり人形にありますが、「ぼく」は脱げない服で顔が隠れてしまっている状態です。もともと人形というのは動かすのが大変不自由なのですが、それに加えて今回は服が脱げないままの状態という制約まであるので、ユーモラスですが役者は大変です。しかも「もうぬげない」に出演する役者はふたりだけ。人形だけでなく、役者たちの芝居にも注目していただくと、より楽しく見ていただけると思います。

脚本を書くとき、最初に観てくださる方の年齢層をある程度想定することが多いのですが、今回は原作が子どもから大人まで楽しめる内容の絵本だったので、そこは気にせず脚色しました。「動く人形が観たい」というお子さんだけでなく、絵本が好き、あるいはヨシタケさんのファンという大人もいらっしゃるはずです。ですから、絵本という2次元の世界が人形劇によって3次元の世界で動き出すことで絵本の世界が広がる、そこは意識して書きました。

役者によって人形に命が宿り、息づかいまで聞こえてくる

──人ではなく人形が演じることの魅力はどんなところにあると思われますか。また、楽しさと難しさ、そしてやりがいを教えてください。

長瀬:人形劇の魅力は、その人形に命が宿ることだと思います。触れない限り人形自ら動くことはありませんが、役者の手が入ることによって息づかいを感じたり、感情が見えたりするのが素敵だなと感じます。実際は表情が動くわけではないのに楽しそうに笑っているように見えたり、悲しいときは泣きそうな顔をしていたり。役者によって人形に命が吹き込まれるところにやりがいを感じます。

人形と向き合い、動かしていくうちに、「この子はこういう動きをするんだ」、「こんなかわいいポーズは取れるんだ」、「そういう性格なの?」といった発見がどんどん出てきます。人形を使うほど、探るほど、かならず応えてくれて広がりも見せてくれます。それは人形を扱う役者としての醍醐味であると同時に、難しいところでもあります。というのも、客席からは何気ない人形の動きでも、実は裏ですごく手数が多く複雑な動きをしていることもあり、それらは根気強く稽古を重ねないとできないからです。それができるようになってこそ、人形たちが見せてくれる世界があります。

人形劇は子どものためだけのものではない

──「もうぬげない」ではぜひここに注目を、という点はどこでしょう。

亀井:美術家が細かいところにもこだわって作っているので、ちょっとした仕掛けなども見逃さずに観ていただきたいですね。

──劇団プークのご紹介をお願いします。

亀井:人形劇団プークは1929年に創立、今年で96年目になる劇団になります。舞台活動を中心とする劇団プークと、新宿にあるプーク人形劇場の管理運営、事業などを行うプーク人形劇場、そしてテレビ、映画など映像の製作にあたるスタジオ・ノーヴァの3セクションからなります。創立以来、「すべての人々の平和と幸せのために」を信条に人形劇を続けてきて、この先も子どもから大人まで楽しめる人形劇を作っていくことがプークの理念です。なので、親子で楽しんでいただける先品から未就園児のご入場をお断りしている大人向けの作品まで、幅広く制作しています。

──都民芸術フェスティバル公式サイトをご覧の方へメッセージをお願いします。

亀井・長瀬:「もうぬげない」に出演している亀井佑子、長瀬円美です。手回しオルガンのメロディーから始まる、さまざまな人形の遣いで魅せる「オルゴール劇場2025」、そして、服が脱げない男の子の空想が広がるイメージの世界「もうぬげない」。3月1日よりプーク人形劇場で公演開始です。ぜひ観に来てくださいね!



人形劇団プーク もうぬげない・オルゴール劇場 2025

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